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消化器外科シリーズ①~便秘!?もしかしておしりが膨らんでいませんか!?便が出ない病気「会陰(えいん)ヘルニア」~

会陰ヘルニアとは・・・

※犬の会陰ヘルニアにおける形成部位による分類|文献①より引用、改変

 

骨盤腔内の肛門周囲の幾つかの筋肉が弱まり、その間から直腸や膀胱、前立腺、腹膜等のお腹の臓器が脱出し、排尿や排便障害を起こす病気です。

 

見た目にはお尻が膨らんできたり、肛門の位置が後ろに出てきたりします。

 

ダックスフンドやコーギーが好発犬種ですが、殆どの犬種で見られます。

 

中高齢の未去勢のオス犬でなりやすいのが特徴です。

 

症状としては・・・、

 

・尿や便が出にくい(少ししか出ない)

・排尿便に時間が掛かる

・排便時に痛がる(鳴く)

 

などがあります。

 

重症化すると消化管穿孔から腹膜炎や敗血症を起こし、死に至ることもあります。

 

治療は出来るだけ早いうちにその隙間を埋める手術を行うことです。

 

今回は14歳の未去勢のダックスフンドの男の子で、うんちが出にくいという主訴で受診。

 

レントゲン写真でお尻の穴が正常な位置より後ろにあって、便が溜まっているのが分かります。

矢印の部分が現在の肛門の位置。

 

検査の結果、お尻の両側とも会陰ヘルニアになっていることが分かりました。

後日、手術を行うことになりました。

 

肛門の両脇を切開し、ヘルニア部分を確認します。

 

隙間を閉じて行きます。

隙間が埋まり、肛門が正常な位置に戻りました。

創部を縫合して終了です。

 

今回のように体調不良に至っていなければ回復も早いですが、放っておくと重症化してしまいます。

一番大切なのは日頃の観察から「これはおかしい・・・」と思うこと。

 

排尿や排便は日常の健康のバロメーターです。

異常に気付かれたら、当院獣医師または医療スタッフまでお気軽にご相談ください。

 

 

<参考文献>

①古屋清一(1984):ヘルニア、腹壁:外科学入門(石川浩一他編)、pp.1121-1136、文光堂、東京