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愛犬が元気がないと思ったら?|変形性関節症と免疫介在性多発性関節症の早期発見・予防・管理の重要性

犬が年齢を重ねるにつれて「なんとなく元気がない」「よく寝ている」と感じることはありませんか?その背景には、変形性関節症や免疫介在性多発性関節症といった関節のトラブルが隠れている場合があります。

特に小型犬や胴長短足の犬種では関節に負担がかかりやすく、症状が出やすい傾向があります。これらの疾患は、愛犬の生活の質を大きく左右するものです。早期発見と適切な対応が、関節の健康を守るカギとなります。

今回は、変形性関節症と免疫介在性多発性関節症の違いや、診断・治療の流れ、日常でできる関節ケアについて解説します。

■目次
1.変形性関節症と免疫介在性多発性関節症のちがい
2.診断と治療
3.予防と進行抑制のポイント|日常でできる関節ケア
4.まとめ

変形性関節症と免疫介在性多発性関節症のちがい


犬の関節トラブルとひとくちに言っても、原因や症状にはさまざまなタイプがあります。
ここでは、よくみられる代表的な関節疾患「変形性関節症」と「免疫介在性多発性関節症」について、その特徴や症状の違いをご紹介します。

<変形性関節症とは>

変形性関節症は、関節内の軟骨が徐々にすり減り、骨と骨が直接ぶつかることで痛みや動きの制限が生じる慢性疾患です。主な原因は加齢ですが、過去のケガや肥満、遺伝的な要因も影響します。

▼好発犬種
ミニチュア・ダックスフンド、トイ・プードル、ラブラドール・レトリーバーなど

▼代表的な症状
初期には、動き始めがぎこちなくなることがあります。進行すると階段や段差を嫌がったり、散歩の途中で歩かなくなったりすることが増えます。

<免疫介在性多発性関節症とは>

免疫介在性多発性関節症(免疫介在性多発性関節炎)は、体内の免疫が関節を誤って攻撃してしまうことで、複数の関節に炎症が起こる疾患です。ウイルスや細菌の感染、自己免疫の異常が原因とされます。明確な痛みのサインが出にくく、原因不明の不調として見過ごされることもある病気です。

▼好発犬種
ビーグル、ジャーマン・シェパード・ドッグなどの中〜大型犬

▼代表的な症状
初期は「なんとなく元気がない」「寝ている時間が増えた」など、あいまいで漠然とした不調が中心です。中には「歩き方がとぼとぼしている」「ずっと寝ている」「検査すると熱がある」といった症状がきっかけで診断に至ることもあります。

変形性関節症は物理的な関節のすり減り、免疫介在性多発性関節症は免疫の異常による炎症と、発症のメカニズムが異なります。いずれも放置すると愛犬の生活に大きな影響を及ぼすため、日常のちょっとした変化に気づけるように、愛犬の様子にしっかり目を向けるようにしましょう。

診断と治療


関節のトラブルは、見た目や動きだけでははっきりと判断できないことがあります。そのため、正確な診断と適切な治療方針の選択が、愛犬の関節を守るうえでとても大切です。

<診断方法>

動物病院では、問診・視診・触診に加え、レントゲン検査血液検査関節液の検査を組み合わせて原因を見極めます。さらに、必要に応じて関節の超音波検査やCT・MRIなどの高度画像診断をご提案することもあります。

こうした検査で関節の状態を正確に把握し、最適な治療方針を立てます。

<治療の選択肢>

治療はいずれも痛みをコントロールし、関節への負担を軽くすることが基本です。

・変形性関節症
進行を遅らせるために、消炎鎮痛剤サプリメントを使用し、温熱療法やマッサージなどの物理療法を組み合わせます。

・免疫介在性多発性関節症
主に免疫抑制剤ステロイド剤を用いた内科的治療を行い、炎症を抑えていきます。

関節疾患は、正確な診断と早期の対応がその後の生活の質を大きく左右します。気になる症状がある場合は、できるだけ早く獣医師に相談しましょう。

予防と進行抑制のポイント|日常でできる関節ケア


関節疾患は、一度進行すると完全に元通りにするのは難しい病気です。しかし、日常生活のちょっとした工夫や習慣で進行を遅らせたり、痛みを和らげたりすることができます。
毎日の暮らしの中で、次のようなポイントを意識してみましょう。

<早期受診>

愛犬の歩き方や立ち上がり方に「なんとなくぎこちなさがある」「最近よく寝ている」と感じたら、迷わず動物病院を受診することが第一歩です。
関節疾患は初期症状があいまいで、見過ごされやすい病気です。早めに診断を受けることで、将来的な関節のダメージを抑えられるだけでなく、痛みや不快感を軽減して日常生活の質を高めることにつながります。

<体重管理と環境整備>

関節にかかる負担を減らすためには、体重と生活環境の見直しが欠かせません。

・適正体重のキープ
肥満は関節に大きな負担をかけるため、日常的な体重管理が重要です。低カロリーのフードに切り替える間食を控える適度な運動を取り入れるなど、無理のない方法で理想体重を維持しましょう。

・生活環境の工夫
滑りやすいフローリングにはマットを敷き、段差にはスロープを設置するなど、家の中のちょっとした工夫で関節への衝撃を大きく減らせます。特に高齢犬や小型犬は、家庭内の段差やジャンプの負担が大きいため注意が必要です。

<散歩時の工夫>

運動は関節の健康維持に大切ですが、無理な動きは症状の悪化につながることもあります。

・散歩は暖かい時間帯に
冷え込みの強い朝晩は関節が硬くなりやすく、急な動きで痛みが出ることがあります。日中の暖かい時間に短めの散歩から始めると、体もほぐれやすく安心です。

・無理のない運動
違和感がある日は散歩を控えめにし、室内での軽い遊びや知育玩具での運動に切り替えると負担を減らせます。毎日の散歩も「距離より質」を意識することが大切です。

・補助グッズの活用
関節サポーター介助ハーネスを活用すると、負担を減らしながら安全に歩行をサポートできます。グッズ選びは必ず獣医師に相談し、愛犬の体格や症状に合ったものを使用しましょう。

<サプリメントの活用と定期健診>

日々のサポートと定期チェックで、関節の健康を守りましょう。

・サプリで関節サポート
グルコサミンコンドロイチンオメガ3脂肪酸などは、軟骨や関節の動きを支えるサポートとして役立つことがあります。ただし、自己判断で与えるのではなく、獣医師に相談して安全な使い方を確認してから始めましょう。

・年1〜2回の定期健診
関節疾患は進行がゆるやかで、外見だけでは分かりにくいこともあります。定期健診で関節の状態を確認しておくことで、早期の変化にも対応しやすくなります。

日常の小さな心がけが、愛犬の関節を守ることにつながります。無理のない範囲でできることから、少しずつ生活に取り入れてみてください。

まとめ


変形性関節症や免疫介在性多発性関節症は、愛犬の生活の質を大きく左右する疾患です。「最近なんとなく元気がない」と感じたら、ぜひ早めにご相談ください。当院では、丁寧な問診と診察で、それぞれの関節疾患に合わせた治療方針をご提案します。

関節の不調は、早期発見・早期対応が肝心です。正しい理解と日々のケアで、愛犬の健やかな毎日を一緒に守っていきましょう。

◼犬の関節のトラブルについてはこちらの記事もご覧ください

 

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