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特発性膀胱炎~トイレ環境の見直しを~

尿を少ししかしない、何回もトイレに行く、尿が赤いとの
主訴で猫さんが来院しました。

前回の記事でご紹介した、尿道閉塞の子と症状が似ていますね。

身体検査の結果、この子は幸い膀胱に蓄尿もなく脱水もなく、
元気食欲もありとのことでした。

尿検査の結果はpH7で赤血球が検出されましたが、結晶は認め
られませんでした。

膀胱の炎症を抑える治療をしたことで、1週間後にはすっかり
排尿ペースと量が戻ったとのことです。

この子は毎年冬に同じ症状で来院されていて、上記のような
経過から特発性膀胱炎を疑いました。

寒くなったことでストレスを感じたこと、飲水量が
減ったことが今回の膀胱炎の原因と考えられます。

特発性膀胱炎とは

結晶や細菌感染、腎結石などの原因が認められない膀胱炎を
特発性膀胱炎といいます。

猫さんの下部尿路疾患で半分以上の発生率を占めています。

特発性膀胱炎の原因

原因として、飲水量の低下と環境ストレスなどがあげられます。

上記の原因がかぶりやすい時期が冬で、そのため冬季に特発性
膀胱炎の来院数が増える傾向にあります。

水を飲まなくなる原因としては水の温度、精神的なものがあります。

環境ストレスとしては、気温変化、引っ越し、同居者の増加・減少、
来訪者、近所での騒音、留守番時間の増加・低下などがあります。

特発性膀胱炎の治療

主に痛みのコントロールとストレスの排除を中心に治療します。

その中でも飲水量増加と環境の改善はかなり重要な位置を占めて
いて、特発性膀胱炎治療の際は必須となります。

繰り返してしまう場合は尿路疾患用フードへの変更や、安寧
フェロモンなどの補助的なものも使用していきます。

特発性膀胱炎の予防

治療とほぼ同じなのですが、飲水量増加と環境エンリッチメントの
見直しになります。

飲水量を増やす

猫さんは水の飲み方にこだわりがあり、特定の飲み方だと
ごくごく飲んでくれることがあります。

好みの器を使う(光るものやプラスチックより大きめの陶器が
好きな子が多い)、冷たくて飲水量が減っているならぬるま湯を
入れる、少し味がついている方が好きならジェル状おやつなどで
味をつける、静かな場所に水を置くなどです。

また、猫さんは喉の渇きを感じ辛い動物なので、動線上にいくつか
水の器を置いてあげるのもポイントです。

おヒゲが器に当たると不快感を感じる子もいるため、一般的には
やや大きめのサイズを好む子が多いです。

環境エンリッチメントの見直し

前回の尿閉への対処ともかぶりますが、猫さんにとって快適な
環境を整えることも重要になります。

好みにもよりますが、ふわふわの寝床をおうちの中に何カ所か
用意したり大きな音をたてないようにしたり、香りがついている
猫砂などを置かないようにしたりということがあげられます。

最も重要なのはトイレの環境です。

猫砂の好みには個体差がありますが、全体的には細かい鉱物系の
無臭の砂が好みという子が多く、砂の厚さは1~2cmほどは欲しい
ところです。

サイズは猫さんの体長の1.5倍が目安で、衣装ケースや
セメント用の箱なども推奨されていますが最近は大型ネコ用の
トイレも発売されているので参考にしてみてください。

清潔なトイレを好む子が多いため、おうちにいる猫さんの
頭数+1を目安にトイレを置いてあげて下さい。

 

特発性膀胱炎は完璧には防げない疾患ではありますが、環境の
整備などはストレス軽減につながり他の疾患の予防にもなるため
ぜひおうちの環境を見直してみてくださいね。

 

投稿者プロフィール

奥村 めぐみ
奥村 めぐみ獣医師
獣医総合臨床医、指導獣医師

○診療科目
内科全般担当