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甲状腺機能亢進症~高齢猫の気になる症状は気軽にご相談を~

食欲元気はあるけど、トイレ外で排尿するという高齢の猫さんが
来院しました。

よくよく聞いてみると夜鳴きもあるそうです。

身体検査では体重減少がみとめられ、血液検査では
T4(甲状腺ホルモン)値の上昇がみられました。

まだこのときは腎数値は上がっていなかったため、甲状腺機能
亢進症として治療を開始しました。

1ヶ月後の血液検査ではT4が半減し、血圧はまだやや高め、症状
としては夜鳴きがなくなったとのことでした。

投薬開始2カ月後の検査では、T4と血圧の正常化がみられました。

1年ほど経過した現在は腎数値がやや上昇してCKDのIRIS分類
(慢性腎不全の重症度分類)ではステージ2になっていますが、
T4は安定していて猫さんの食欲元気も良好に保てています。

高齢猫さんのため、オーナーさんと話し合い皮下補液は元気が
あるうちは極力なしでとの方向で維持をしており、なるべく
おうちで水分をとってもらうことにしています。

トイレ外での排尿は甲状腺の多飲多尿のせいもありましたが、
加齢により筋肉量が減ったことと関節炎も関連していたため
完全には解決しませんでした。

これについてはトイレ時に補助をしてもらったり、トイレシートを
広めに敷いてもらったりして対処していただいています。

甲状腺機能亢進症について

猫さんに代表的な内分泌疾患で甲状腺ホルモン(T4)が過剰に
分泌されてしまう病気で、特に高齢の子にみられる病気です。

原因として結節性科過形成、腺腫、腺癌があげられ、よく見られる
臨床症状は体重減少、食欲低下、活動性の亢進(夜鳴きなど)、
多飲多尿、被毛のぱさつき、高血圧などです。

高血圧と頻拍により二次的な肥大型心筋症になる子もいて、
重度になると失明したりけいれんを起こしたりもします。

診断は臨床症状と血液検査(T4測定など)により行います。

甲状腺機能亢進症の治療

抗ホルモン剤の投与による内科療法、外科、食事療法があります。

日本では内科療法による治療が多く、抗ホルモン剤により慢性
腎不全が顕在化することもあるためお薬の効果判定や腎数値の
チェックを定期的に行う必要があります。

外科は病変側の甲状腺摘出を行う手術ですが、日本ではあまり
選択されません。

食事療法での推奨フードはヒルズy/dが代表的ですが、ヨウ素が
制限されたフードは猫さんにとってあまり魅力的ではないらしく
食欲のある甲状腺機能亢進症に適応となります。

早期発見のために

甲状腺機能亢進症は食欲元気が亢進し、一見健康に見えます。

しかし重症になると肥大型心筋症や失明、けいれんなどの症状も
出てくる実は怖い病気です。

夜鳴きや嘔吐増加など、認知症や腫瘍、腎不全など他の疾患でも
ありえるような症状を呈するため様子を見てしまうケースも多い
です。

早期に発見し治療をすることで予後が良い病気でもあるため、
気になる症状があるようであれば健康チェックがてらご相談して
みてくださいね。

また、気になる症状がなくても高齢になったら定期的に
T4値を含めた血液検査をしていくことで種々のモニタリングが
可能になります。

年々の変化を見ていくと病気の早期発見につながることも多い
ため、ぜひ定期的な健康診断をご検討ください。

 

投稿者プロフィール

奥村 めぐみ
奥村 めぐみ獣医師
獣医総合臨床医、指導獣医師

○診療科目
内科全般担当