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愛犬の肝臓病サイン、見逃していませんか?早期発見のポイントを獣医師が解説

肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれるほど、病気になっても目立った症状が出にくい臓器です。そのため、気づいたときにはすでに進行しているケースも少なくありません。愛犬の体に現れるサインを見逃さず、早期に気づくことが肝臓病の管理には重要です。

今回は、犬の肝臓がどんな役割を果たしているのか、肝臓病の種類や症状、診断方法、治療、家庭でできる予防やケアについて解説します。


■目次
1.肝臓ってどんな臓器?犬にとっての大切な役割
2.犬がかかりやすい主な肝臓病と症状
3.肝臓病はどう診断する?動物病院での検査
4.肝臓病の治療法
5.ご家庭でできる肝臓病の予防とケア
6.まとめ

肝臓ってどんな臓器?犬にとっての大切な役割


肝臓は、体の中で以下のような重要な働きを担っています。

解毒作用:体内の有害な物質を分解し、無毒化します。
栄養素の貯蔵と代謝:食事で得た栄養を体内で使いやすい形に変えます。
胆汁の生成:脂肪の消化を助ける胆汁を作り、胆嚢に貯蔵します。

このように肝臓は、生命維持に欠かせない機能を多数担っており、肝臓の機能が低下すると全身にさまざまな影響が出てきます。

犬がかかりやすい主な肝臓病と症状


肝臓病はゆっくり進行することが多く、初期の段階では症状が見えにくいため、気づいたときには重症化していることもあります。ここでは、犬がかかりやすい肝臓病の種類と、それぞれで見られる症状の変化をご紹介します。

<主な肝臓の病気>

・急性肝炎
ウイルスや細菌による感染、中毒性の物質(薬、毒、化学物質など)が原因で、急激に肝臓の炎症が起きる病気です。急な体調不良や消化器症状を伴うことが多く、放置すると重症化するおそれがあります。

・慢性肝炎
ゆっくりと進行する肝臓の炎症で、初期には目立った症状が出にくいのが特徴です。時間をかけて少しずつ肝機能が低下していきます。肝炎が進行すると肝硬変となり、がんへ進行するケースもあります

・肝硬変
慢性的な肝炎や脂肪肝などを背景に、肝臓の組織が線維化して硬くなり、機能が著しく低下した状態です。全身に深刻な影響を与えることがあります。放置すると肝不全となり、命にかかわる場合もあります

・胆嚢疾患(胆嚢炎、胆嚢粘液嚢腫、胆石)
胆嚢に起こるさまざまなトラブルも肝臓と関係が深く、胆汁の流れが滞ることで肝臓に負担がかかります。重症例では外科的な処置が必要になることもあります。

<肝臓病の進行に伴う症状の変化>

肝臓病では、以下のような症状が段階的に現れてきます。

▼初期のサイン
食欲不振:肝臓が栄養の代謝に関わっているため、機能が落ちると食欲が低下します。
元気の低下:解毒機能が落ちることで体に疲労物質がたまり、活動量が減ります。

▼中等度の進行
嘔吐・下痢:肝機能の低下により、消化機能や栄養吸収に影響します。
体重減少:食欲低下と代謝機能の低下により、徐々に痩せていきます。

▼重度の進行
黄疸(皮膚や白目が黄色くなる):胆汁の流れが滞ることで、体内にビリルビンが蓄積します。
腹部膨満:肝硬変などで腹水がたまり、お腹が膨らむことがあります。
異常行動・意識障害:毒素が脳に影響を及ぼす「肝性脳症」の状態に進行する場合があります。

<飼い主さまがチェックできる肝臓病の兆候とは?>

早期発見には、日常生活でのちょっとした変化に気づくことが大切です。以下のようなサインは、実は肝臓病の初期サインであることもあります。

☑ 食事の様子
・食いつきが悪い、食べ残しが増えた
・好物にも反応しなくなった

☑ 排泄の状態
・便の色が白っぽい(胆汁の分泌低下による)
・下痢が続く、便が柔らかくにおいが強い
・尿の色が濃い、量が少ない

☑ 飲水量の変化
・水をあまり飲まない
・反対に、急にたくさん水を飲むようになった

☑ 行動の変化
・寝ている時間が長くなった
・呼びかけに対する反応が鈍い
・散歩に行きたがらない

このような変化は、一見すると「年のせいかな?」と見過ごされがちですが、気になる変化に気づいたときは、早めに獣医師に相談しましょう。

肝臓病はどう診断する?動物病院での検査


肝臓病は初期には目立った症状が出にくいため、検査によって初めて異常に気づくケースも少なくありません。動物病院では、愛犬の状態を正確に把握するために、さまざまな検査が行われます。

<主な検査方法>

・血液検査
血液中の成分を調べることで、肝臓に負担がかかっていないか、炎症や細胞の破壊が起きていないかを確認します。肝臓に異常があると、特定の酵素の値が上昇するなどの変化が見られます

・エコー(超音波)検査
お腹に超音波を当てて、肝臓や胆嚢の大きさ・形・内部の状態を画像で確認する検査です。腫れやしこり、胆石などの有無を調べることができます。痛みはなく、愛犬への負担が少ない検査方法です。

・レントゲン検査
肝臓の位置や全体的な大きさを把握するのに役立ちます。腹部のほかの臓器との位置関係なども一緒に確認できます。

・細胞診・生検(必要に応じて)
状態によっては、肝臓の細胞を一部採取して詳しく調べることもあります。これは主に、腫瘍などが疑われる場合に行われます。

<定期的な健康診断の大切さ>

肝臓病は、気づかれにくく進行しやすい病気です。そのため、症状が出てからの治療よりも「元気そうに見えるとき」に検査を受けておくことが、早期発見・早期治療につながります。

定期的な健康診断では、血液検査やエコー検査を通じて、目には見えない体の異変をいち早く見つけることができます。特に中高齢の犬では、年に1回〜2回の健診を習慣にすることで、肝臓を含むさまざまな病気への早期対応が可能になります。

肝臓病の治療法


犬の肝臓病の治療は、原因に応じた治療と、症状を和らげる対症療法を組み合わせて行われます。

主な治療法には以下のようなものがあります。

・食事療法
肝臓に負担をかけない、低たんぱく・低脂肪の療法食を用いることが多く、症状のコントロールに役立ちます。

・投薬治療
肝機能を助ける薬や、必要に応じて抗炎症薬、抗生物質などを使用します。

・点滴や注射による対症療法
嘔吐・下痢・脱水がある場合に体調を整えるために行います。

・外科手術
胆石や胆嚢疾患など、外科的な対応が必要なケースもあります。

治療期間や予後は病気の種類や進行具合によって異なりますが、早期発見・早期治療によって改善が見込めるケースも多くあります。

なお、ネット上の情報をもとにした自己判断や民間療法は、病気の悪化を招くリスクがあります。治療は必ず、獣医師による正確な診断と専門的な管理のもとで行うことが大切です。

ご家庭でできる肝臓病の予防とケア


肝臓病は気づきにくい病気だからこそ、日頃の予防とケアが大切です。以下のポイントを意識してみましょう。

<食事は肝臓にやさしい内容に>

高たんぱく・高脂肪は避け、低たんぱく・低脂肪で消化しやすい療法食が基本です。少量ずつ数回に分けて与えると肝臓の負担が減ります。食事内容は必ず獣医師と相談しましょう。

<適度な運動と体重管理を>

肥満は肝臓への負担になります。無理のない範囲でのお散歩や、日々の運動を続けましょう。

<拾い食いや誤食に注意>

ネギ類や薬品などの中毒物質は肝臓にダメージを与えます。お散歩中や家庭内の環境には注意を払いましょう。

<定期的な健康診断を受ける>

血液検査やエコー検査でしかわからない初期の異常もあるため、年1回の健診(高齢犬は半年に1回)がおすすめです。

日々のちょっとした気配りが、愛犬の肝臓を守る大きな力になります。「いつも通り」の中にある変化を見逃さず、気になることがあれば早めに動物病院で相談しましょう。

まとめ|日々の気づきが、愛犬の肝臓を守る第一歩に


肝臓病は症状が出にくく進行しやすい病気ですが、日常生活の中で見られる小さなサインに気づくことが、愛犬の健康を守るカギとなります。「食欲がない」「元気がない」「便の色が変わった」など、いつもと少し違う様子に早めに気づくことで、重症化を防ぎやすくなります。

そして、肝臓病の多くは、早期発見と適切な治療・ケアによってコントロールできる病気です。定期的な健康診断を受けるとともに、少しでも不安を感じたら、どうか躊躇せず獣医師にご相談ください。日々のちょっとした気配りと、専門家のサポートで、愛犬とともに健やかな毎日を過ごしていきましょう。

 

愛知県みよし市にある犬と猫の病院「Ken doc.」
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