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犬の膀胱炎と尿路結石|梅雨時期に気をつけたい泌尿器トラブル

膀胱炎や尿路結石は、犬にとって身近な泌尿器のトラブルのひとつですが、気づくのが遅れると重症化し、命に関わるおそれもあるため注意が必要です。

特に梅雨の時期は、湿度の上昇や運動不足、水分摂取量の減少などが重なり、膀胱炎や尿路結石の発症リスクが高まる傾向があります。犬は不調を言葉で伝えることができないため、飼い主さまが排尿の様子や行動の変化に早く気づくことが、健康を守る第一歩です。

今回は、梅雨時期に注意したい膀胱炎・尿路結石の症状や原因、予防法を獣医師の視点から詳しくご紹介します。


■目次
1.犬の泌尿器の仕組みと働き
2.膀胱炎・尿路結石の症状と見逃しやすいサイン
3.動物病院で行う検査と診断の流れ
4.膀胱炎・尿路結石の治療方法
5.梅雨時期に注意したいご家庭でのケアと予防法
6.まとめ|早期発見が大切な理由

犬の泌尿器の仕組みと働き


犬の泌尿器は、腎臓・尿管・膀胱・尿道で構成されています。

腎臓:血液をろ過し、老廃物や余分な水分を尿として生成
尿管:尿を膀胱へ運ぶ通り道
膀胱:尿を一時的に貯めておく器官
尿道:尿を体外へ排出する経路

泌尿器の主な役割は以下の通りです。

老廃物の排出
体内の水分・電解質バランスの調整
血液のpH調節
血圧やホルモンの調整

これらの働きが乱れると、尿毒症や脱水、むくみ、高血圧、貧血など、全身にさまざまな悪影響が及ぶおそれがあります。

膀胱炎・尿路結石の症状と見逃しやすいサイン


犬の膀胱炎は、細菌感染・結石・腫瘍・外傷などが原因で膀胱に炎症が起こる病気です。
一方、尿路結石は、尿中のミネラル成分が結晶化して結石となり、膀胱や尿道に詰まることで炎症や閉塞を引き起こす疾患です。

どちらも放置すると重症化し、命に関わることもあります。

<主な症状>

排尿回数が増える(頻尿)
排尿時に痛そうな様子や鳴き声がある
血尿や濁った尿、強い臭いの尿
陰部や下腹部を頻繁になめる
トイレ以外の場所での排尿(粗相)
食欲不振、元気の低下、発熱、嘔吐などの全身症状

特に「尿が全く出ない」状態は緊急です。すぐに動物病院へご相談ください。

<日常的にチェックしたいポイント>

排尿の回数・量・様子
尿の色・におい
水の飲み方(飲む量・頻度)

こうした小さな変化を見逃さず、早めに気づいて対処することが、膀胱炎や尿路結石の重症化を防ぐ鍵となります。

動物病院で行う検査と診断の流れ


膀胱炎や尿路結石は、見た目だけでの判断が難しいため、以下のような検査を組み合わせて診断します。

尿検査:血液、結晶、細菌、pHバランスなどを確認
血液検査:腎臓の働きや体の炎症状態を評価
超音波検査(エコー):膀胱や腎臓の構造を確認、結石や腫瘍の有無も検出可能
レントゲン検査:尿路に詰まった結石の位置や大きさを確認
細菌培養・感受性試験:感染が疑われる場合、原因菌と有効な抗生剤を特定

これらの検査によって原因と重症度を把握し、最適な治療を選択します。

膀胱炎・尿路結石の治療方法


治療法は症状や原因、結石の種類や大きさによって異なります。

細菌性膀胱炎抗生物質の投与が基本
ストルバイト結石抗生物質+療法食での食事療法(小さい結石は溶解可能)
シュウ酸カルシウム結石:基本的に外科手術での摘出が必要

尿道閉塞時の緊急処置として膀胱洗浄・尿道カテーテルや、投薬や食事で改善できない場合に外科手術による結石除去を選択することもあります。

市販薬や自己判断による対処は病状を悪化させるおそれがあるため、必ず獣医師の診断を受けましょう

梅雨時期に注意したいご家庭でのケアと予防法


梅雨は、泌尿器トラブルが起こりやすい季節です。高湿度や気温の変化により、体調が不安定になりやすいだけでなく、雨で散歩の回数が減る室内にいる時間が長くなる水を飲む量が少なくなるなど、愛犬にとってさまざまな負担がかかります。

これらの要因が重なることで、膀胱内に尿が長くとどまり、細菌の繁殖や結晶の形成を促進しやすくなるため、日々の生活習慣を見直すことがとても重要です。

以下の対策を意識することで、梅雨時期の泌尿器疾患を予防しやすくなります。

<水分摂取を意識的にサポート>

泌尿器の健康を守るうえで、しっかり水を飲むことが最も大切な予防策です。飲水量が増えることで尿が薄まり、膀胱内にたまった老廃物や結晶を排出しやすくなります。

☑ 水をこまめに交換し、常に新鮮な水を用意する
ドライフードにぬるま湯を加えるなど、水分を自然に摂れる工夫を
☑ ウェットフードの併用や、スープ状のトッピングを取り入れるのもおすすめ
☑ 飲水量が少ない場合は、器を変更してみる(陶器・ガラス製など)

<排尿機会をしっかり確保>

梅雨は散歩の頻度が減りやすく、排尿の機会が不足しがちです。尿を長く膀胱にとどめることは、膀胱炎や尿路結石のリスクを高める要因になります。 排尿のタイミングを増やして、我慢させないようにしましょう。

室内トイレの環境を整えて、気軽に排尿できるようにする
☑ 雨が止んだタイミングを見計らって、短時間でもこまめに散歩へ出る
トイレの回数や尿の色・量を観察し、変化に早めに気づけるように意識する

<食事内容を見直す>

尿路結石の種類や体質によって、合わない食事は再発の原因になることがあります。再発予防のためにも、食事選びには注意が必要です。

☑ 尿路結石に配慮された療法食泌尿器ケア対応の総合栄養食を選ぶ
☑ 療法食の使用は、必ず獣医師と相談のうえで行う
塩分の高いおやつや、人間の食べ物は避ける
食事は複数回に分けて与えることで、代謝や排尿をサポートする効果も

<室内環境を快適・清潔に保つ>

湿度の高い梅雨時期は、菌やカビが繁殖しやすいだけでなく、犬にとっても不快感からストレスが増し、免疫が低下しやすくなる時期です。

☑ 室内の湿度は40〜60%を目安にキープ(除湿器やエアコンの活用
トイレはこまめに掃除して清潔を保つ
濡れた体はすぐに拭き、皮膚トラブルも予防
☑ 長時間同じ場所に寝ている場合は、寝床の湿気や清潔さにも注意

少しの工夫と心がけで、泌尿器トラブルのリスクはぐっと下げられます。
梅雨の時期だからこそ、環境・食事・排尿・水分補給の4つの柱を意識した生活管理で、愛犬の健康をしっかり守ってあげましょう。

まとめ


膀胱炎や尿路結石は、犬にとって決して珍しくないトラブルですが、早期発見と適切なケアでコントロールできるケースも多くみられます。
特に梅雨のような季節の変わり目には、日々の体調変化を見逃さず、小さなサインにも敏感でいることが大切です。「ちょっと気になるな」と思ったら、どうぞお気軽に当院までご相談ください。早めの受診が安心への近道です。

◼犬の泌尿器トラブルについてはこちらの記事もご覧ください

 

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