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犬が咳をする原因は?気管支炎と気管虚脱の見分け方と治療法

愛犬が咳をして苦しそうにしていると、とても不安になりますよね。

その咳は、もしかすると「気管支炎」や「気管虚脱」といった呼吸器の病気によるものかもしれません。どちらも「咳」を主な症状としますが、原因や治療法は異なります。

今回は、犬の気管支炎と気管虚脱について、原因から見分け方、治療の選択肢までを解説します。


■目次
1.犬の気管支炎とは
2.犬の気管虚脱とは
3.気管支炎と気管虚脱の違いと見分け方
4.治療と生活で気をつけたいこと
5.まとめ

犬の気管支炎とは


気管支炎とは、肺へ空気を届ける通り道である「気管支」に炎症が起こる病気です。炎症が続くことで呼吸がしづらくなり、咳や元気消失などの症状が見られます。

気管支炎には 「急性」と「慢性」 の2つのタイプがあります。

急性:一時的な症状で、数週間以内に改善することが多い
慢性:数か月以上にわたって咳が続く状態

急性から慢性へ移行することもあり、一度慢性化すると治療は長期にわたり、完治が難しいケースもあります。

<主な原因>

感染症:ケンネルコフ(細菌・ウイルス感染)、寄生虫感染など
アレルギー:花粉、ホコリ、ダニ、カビなどの吸入
環境要因:乾燥、タバコの煙、大気汚染などの刺激

▼ケンネルコフの予防についてはこちらで詳しく解説しています

 

<主な症状>

(運動後や興奮時、夜間や早朝に強まることが多い)
呼吸困難
食欲不振
元気がなくなる

慢性気管支炎に進行すると咳が習慣化し、体力を奪っていきます。「よくある咳」と見過ごしてしまうと、症状が悪化して治療が長期化することもあるため、早めの受診が大切です。

犬の気管虚脱とは


気管虚脱とは、本来は筒状の気管がつぶれてしまい、呼吸の通り道が狭くなる病気です。息を吸ったり吐いたりするたびに気管が変形してしまうため、呼吸に大きな負担がかかります。

特に小型犬に多く、チワワヨークシャー・テリアポメラニアンシー・ズーなどでよく発症します。

<主な原因>

遺伝的要因:小型犬に多く見られる体質
加齢:気管の弾力や強度が低下
肥満:体重増加で気管への圧力が強まる
慢性呼吸器疾患:長期的な咳や炎症の影響
首輪による強い引っ張りや、興奮しやすい性格も悪化要因に

<主な症状>

「ガーガー」というガチョウの鳴き声のような咳
興奮時や運動後、首元を圧迫したときに咳が出やすい
咳が止まらない
舌や歯ぐきが紫色になる(チアノーゼ)
呼吸困難

症状が進行すると寿命や生活の質に大きく影響することもあるため、気になる症状がみられたら早めの受診を検討しましょう。

気管支炎と気管虚脱の違いと見分け方


このように、愛犬の咳の背景には、気管支炎や気管虚脱といった病気が隠れていることもあります。見分け方のポイントを知っておくと、早めの受診や適切な治療につなげやすくなります。

<共通点>

どちらの病気も「」が主な症状です。特に運動後や興奮したときに咳が出やすい点は共通しています。

<相違点>

大きな違いは咳の特徴です。

気管支炎乾いた咳が長引きやすく、夜間や早朝に強まることが多い
気管虚脱:特徴的なのは「ガーガー」というガチョウの鳴き声のような咳で、首元を圧迫したときや興奮時に出やすい

<動物病院での診断方法>

咳の原因を正しく見極めるには、動物病院での検査が欠かせません。実際の診察では次のような検査を組み合わせて行います。

問診:咳の出るタイミングや状況を詳しく確認
身体検査・聴診:呼吸音や心音の異常をチェック
レントゲン検査:気管や気管支、肺の状態を確認
血液検査:炎症や感染の有無を調べる
気管支鏡検査(全身麻酔下):気管や気管支を直接観察し、必要に応じて洗浄液や組織を採取して検査

これらを総合的に判断することで、咳の背景にある病気を正確に見極めることができます。

<ご自宅での観察ポイント>

咳は診察室ではなかなか再現されないことが多いため、普段の様子を飼い主さまから伝えていただくことがとても重要です。

特に次の点を観察しておくと診断の助けになります。

咳のタイミング(運動後・夜間・安静時など)
咳の音や特徴(乾いた咳/「ガーガー」とした咳など)
元気や食欲の変化
呼吸の速さや苦しそうな様子はないか

こうした情報は、診察室での検査結果と合わせて病気をより正確に判断する大きな手がかりになります。

治療と生活で気をつけたいこと


咳の原因が気管支炎なのか気管虚脱なのかによって、治療の方法は異なります。ですが、共通していえるのは、病院での治療と日常生活の工夫を両輪で行うことが大切だということです。

<病院での治療>

まずは動物病院で適切な診断を受け、その結果に応じて治療を進めていきます。

・気管支炎
感染が原因なら抗菌薬、炎症が強い場合は抗炎症薬が使われます。咳を和らげるためにネブライザー(吸入治療)が行われることもあり、慢性化している場合には長期的な管理が必要になります。

・気管虚脱
咳止め気管支拡張薬抗炎症薬などで症状を和らげます。こちらもネブライザーが有効なケースがありますが、重症になると外科手術が必要になることもあります。

治療方針は症状の程度や犬の状態によって変わるため「うちの子に合った方法」を見つけることが重要です。

<ご家庭でできる工夫>

病院での治療をサポートするために、日常生活の中でも咳を悪化させない工夫が重要です。

・首輪からハーネスへ
首元への刺激を減らすだけで咳が軽くなることがあります。

・環境を整える
室温は22〜25℃、湿度は40〜60%を目安に、空気の乾燥や急激な温度差を避けましょう。

・アレルゲン対策
ホコリや花粉、カビなどを減らすために掃除や換気を工夫すると安心です。

・体重管理
肥満は気管への負担を増やします。適切な体重維持は大切な予防策です。

・無理のない運動
急なダッシュや興奮しやすい状況を避け、落ち着いた環境で過ごさせましょう。

こうした日常の小さな配慮が、治療効果を高め、症状の悪化を防ぐことにつながります。「病院での治療+ご家庭での工夫」をセットで行うことが、愛犬の呼吸を少しでも楽にし、安心した生活につなげる近道です。

まとめ


咳は「少し様子を見よう」と思われがちですが、実は深刻な病気のサインであることも少なくありません。気管支炎や気管虚脱は、放置すると慢性化したり、命に関わる状態へ進行することもあります。

「長引く咳が続いている」「他院で治療しても良くならない」——そんなときこそ、専門的な検査と治療で原因をしっかり突き止めることが大切です。気になる咳がある場合は、早めに動物病院にご相談ください。

◼犬の咳についてはこちらの記事もご覧ください

 

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