ヘビ咬傷
昨夜お散歩から帰ってきたら顔が腫れ始めたとの主訴で
来院した犬さん。
鼻の右側から唇にかけて2ヶ所牙痕(がこん)が見つかり、昨夜は
そこから血が出ていたそうです。
ヘビ咬傷は犬さんだと人間に比べ軽傷で済むことも多いですが、
稀に重傷化することもあるため血液検査や聴診などを行い
状態をチェックしていきます。
この子は幸い溶血(赤血球が壊れること)が軽度で、一時的に
赤血球数や血小板の低下がみられたものの順調に回復して
くれました。
ヘビの咬傷事故についての概要
犬さんに対する咬傷事故の発生が最も多いのはマムシです。
ヤマカガシは牙の位置や気性の穏やかさからマムシに比べて発生は
少なく、沖縄だとハブによる事故も多いです。
外猫さんが咬まれてしまうこともたまにあります。
時期については、この地域では春中旬の暖かくなってきたころと
夏下旬の酷暑が過ぎたころにヘビの出現が多くなってくるため
特に注意をしてあげてください。
ヘビ毒について
たんぱく分解酵素を含んでいるためアナフィラキシーショックや
数日かけての組織の壊死などが心配になる毒液で、咬まれた際の
症状は元気消失、嘔吐、発熱、出血傾向、低血圧、不整脈、
溶血、アルブミン値や腎数値などの低下や上昇など多岐にわたります。
咬まれてから20~30分くらいで腫れてきて、激しい疼痛を伴うため
犬さんが元気を無くすことも多いです。
ハブのほうがマムシよりも循環不全を起こしやすいを言われています。
治療と経過
基本的には対症療法です。
“咬傷”であるため抗生物質での感染管理と、激しい疼痛を抑えるため
抗炎症剤と鎮痛剤を使用します。
犬さんはマムシ毒に対する抵抗性が人間よりも高いため、日本では
血清による治療は一般的ではありません(人間でも血清を使用するのは
ほんの1割くらいらしいです)。
マズルは意外とすんなり治ることが多いですが、首元などの柔らかい
ところや四肢端などは数日たってから内出血をしたり皮膚の壊死を
起こすこともあります。
なるべく早く治療を開始したほうが重篤化を防ぐことができるため、
もしかして咬まれたかもと思った時点で来院をお考え下さい。
予防
草むらに近寄らせないことが1番です。
どうしても草むらに入りたい場合には、人間が先導して傘などで
確認をしてあげてください。
また、ヘビがよく現れる夜間は視界も狭く、他の危険が道路上に
あっても判別し辛い状況です(死骸、生ゴミ、ガラス、たばこ等)。
そのためリードを短く持ち、犬さんを飼主さんが把握できない
距離まで行かせないようにするのが危険を回避するために重要と
なります。
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