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夏に気をつけたい!犬の食中毒~症状・原因食材・予防のポイントを獣医師が解説~

暑さが厳しくなるこれからの季節は、食べ物が傷みやすくなるうえ、バーベキューやピクニックなど屋外での飲食の機会が増えるため、誤食や中毒のリスクが高まります。

愛犬が落ちている食べ物を拾い食いしてしまったり、人の食事を誤って口にしてしまったりするケースも少なくありません。なかには、短時間で重篤化するおそれがある中毒もあるため、早めの気づきと適切な対処がとても大切です。

今回は、犬の食中毒について、主な症状や原因となる食材、そして日常でできる予防法までを詳しくご紹介します。


■目次
1.犬の食中毒の主な症状|早期発見のために知っておきたいサイン
2.こんな症状が出たらすぐ病院へ|受診の目安と対処法
3.犬が食べてはいけない・注意が必要な食材とは
4.食中毒を防ぐためにご家庭でできること
5.まとめ

犬の食中毒の主な症状|早期発見のために知っておきたいサイン


犬の体調は言葉で伝えられないからこそ、小さな変化に気づくことが何より大切です。食中毒では、いつもとは違う様子が最初のサインになります。

<主な症状>

以下は、食中毒で特に多く見られる症状です。

嘔吐:吐く、または吐こうとしているのに吐けない
下痢:軟便〜水様便が出る
元気消失:動きが鈍くなる、横になってばかりいる
食欲不振:フードやおやつを残す、においを嗅ぐだけで口をつけない
発熱:熱っぽさ、呼吸が浅く速くなるなどの様子が見られる
脱水:口の中が乾燥している、皮膚をつまんでも戻らない

<症状の出方には個体差や時間差も>

犬の食中毒は、同じものを食べても症状が出る犬と出ない犬がいるなど、反応に個体差があります。年齢や体重、体質や免疫力などによって違いが出るためです。

また、すぐに症状が現れる「急性型」だけでなく、数日かけてじわじわと体調を崩す「遅延型」もあります。「昨日のおやつ」「数日前の拾い食い」など、少し前の出来事が原因となることもあるため、受診時には思い当たることをできるだけ詳しく伝えるようにしましょう。

こんな症状が出たらすぐ病院へ|受診の目安と対処法


「少しの嘔吐だし、大丈夫かな」「一度きりの下痢なら様子を見ようかな」と判断に迷われることもあるでしょう。しかし、犬の食中毒は急速に悪化するケースもあるため、早めの対応が大切です。

特に以下のような症状が見られた場合は、迷わず動物病院にご相談ください。

嘔吐や下痢が短時間に繰り返し起こる
便や吐しゃ物に血が混ざっている
水やフードを一切口にしない状態が続く
ぐったりしていて反応が鈍く、自力で立てない
呼吸が荒く、落ち着かずそわそわしている
ふらつきや痙攣のような動きがある

これらの症状は、脱水や胃腸の炎症、神経への影響などが進んでいるサインかもしれません。特に、子犬や高齢の犬、基礎疾患のある犬では、重症化しやすいため慎重な対応が求められます。

<受診前に準備しておきたいこと>

診察をスムーズに進めるために、以下の情報を簡単にメモして持参されると、診断の大きな手がかりになります。

・いつから症状が出始めたか
・何を、どれくらい食べたか
・食べた時間や状況(例:「午後3時ごろに落ちていた焼き鳥を食べた」など)
・他の同居犬や猫に似た症状が出ていないか
・直近の生活の変化(旅行、イベント、来客など)

また、食べたもののパッケージや成分表示の写真があれば、あわせてお持ちいただくと診断の参考になります。

<自己判断での様子見は危険なことも>

犬はとても我慢強い動物のため「なんとなく元気がない」「少し様子が変かも」といった小さな変化が、すでに体の不調を示していることもあります。迷ったときは無理に様子を見ようとせず、早めに動物病院へご相談ください

犬が食べてはいけない・注意が必要な食材とは


犬の食中毒の多くは、人にとっては無害な食べ物を口にしたことが原因で起こります。特に夏は気温の上昇やレジャーの機会が増えることで、犬が危険なものを誤って食べてしまうリスクが高まります。

ここでは、犬にとって危険性の高い食材や、夏に起こりやすい誤食のシーンについてご紹介します。

<中毒リスクのある食材>

人の食事に含まれる身近な食材の中には、犬の体に有害なものがあります。特に夏場は焼き肉やバーベキューなど、こうした食材に触れる機会が増えるため注意が必要です。

ネギ類(玉ねぎ、長ねぎ、にんにく、ニラなど)
赤血球を壊す成分が含まれており、貧血や嘔吐、下痢などを引き起こすことがあります。少量でも中毒を起こすおそれがあり、加熱しても毒性はなくなりません。

チョコレートやココア
含まれるテオブロミンという成分が中毒を引き起こし、興奮、震え、けいれんなどの症状を招きます。来客時のお菓子やプレゼントにも注意しましょう。

ぶどう・レーズン
腎障害を引き起こすことがあり、少量でも危険です。パンやお菓子に含まれていることもあります。

キシリトール(ガム、歯磨き粉、タブレットなど)
血糖値の急激な低下や肝障害を引き起こすおそれがあります。バッグの中やテーブルの上にあるものを犬が口にしてしまう事故が多くみられます。

アルコール類やカフェイン飲料(コーヒー、エナジードリンクなど)
神経系に影響を与え、嘔吐やふらつき、けいれんを起こすことがあります。特に夏場は飲み残しのドリンクに注意が必要です。

<腐敗・劣化によるリスクがある食材>

夏は食材が傷みやすく、細菌やカビが繁殖しやすい季節です。見た目では分からない劣化もあるため、注意が必要です。

傷んだフードや手作り食
保存状態が悪いと腐敗し、食後に嘔吐や下痢などの消化器症状を引き起こします。

冷蔵保存が不十分だったもの
冷蔵庫内の温度や保管時間によっては、目に見えないレベルで劣化していることがあります。

<誤飲によるリスクがあるもの>

調理に使われる道具や食べ物の残りかすなど、食材以外のものを飲み込んでしまい、体内で詰まる・傷つけるといった事故も多く発生しています。

とうもろこしの芯
香ばしいにおいにつられて丸飲みしてしまい、腸閉塞を起こすことがあります。

竹串・爪楊枝・包装材などの異物
においにつられて誤って飲み込む事故が多く見られます。消化管を傷つけたり、消化されずに腸に詰まるおそれがあるため、調理中や片づけ前の一時的な放置にも注意しましょう。

骨類(加熱・未加熱を問わず)
骨が割れて鋭くなり、口腔や食道、腸を傷つけるおそれがあります。犬には与えないようにしましょう。

食中毒を防ぐためにご家庭でできること


犬の食中毒は、ちょっとした工夫や心がけでリスクを減らすことができます。ご家族全員でルールを共有し、愛犬が安全に夏を過ごせるように備えましょう。

<フードや食材の保存管理を徹底する>

・ドライフードは密閉容器で直射日光を避けて保管する
・ウェットフードや手作り食はすぐに冷蔵し、開封後は早めに使い切る
・冷蔵庫内の食材も、賞味期限や状態をこまめにチェックする

<拾い食いや誤飲をさせないための環境づくり>

・散歩中はリードを短めに持ち、地面を執拗に嗅がせない
・ゴミ箱やテーブルに食べ物を置きっぱなしにしない
・来客時は犬を一時的にサークルに入れるなど、安全なスペースに移動させる

<食材を与えるときのルールを家族で共有する>

・「与えてよいもの・与えてはいけないもの」を家族全員で確認しておく
・来客がある際には、犬に食べ物を与えないように事前に伝えておく
・子どもには「与えるときは大人にひと声かける」などのルールを決めておく

まとめ


夏場は気温や湿度の上昇により、食べ物の劣化が早まり、犬の食中毒リスクが高まる季節です。特に、バーベキューや来客などの機会が増えると、愛犬が思わぬものを口にしてしまう危険もあります。犬にとって有害な食材を正しく知り、保存管理や誤飲対策を徹底することが、食中毒予防の第一歩です。

万が一体調に異変を感じた際には、早めの相談が大切です。「こんなことで相談していいのかな」と迷われるようなことでも、どうぞお気軽に当院までご相談ください。

◼犬の食中毒についてはこちらの記事もご覧ください

 

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