マダニは春夏だけじゃない?犬や猫の命を守るための予防と対策
愛知県では、今年に入りマダニが媒介する「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」の患者が7名報告され、そのうち2名が亡くなっています(2025年7月23日現在)。以前は西日本を中心に発生が確認されていましたが、近年は東日本でも報告が増えています。
SFTSは発熱や消化器症状に加え、血小板の減少によって出血症状を伴い、最悪の場合は命を落とす恐ろしい病気です。致死率は人で約30%、犬で約40%、猫では約60%に達するともいわれています。大切な犬や猫を守ることは、飼い主さまご自身やご家族の命を守ることにも直結します。
今回は、SFTSをはじめとしたマダニが媒介する病気や予防法について解説します。
■目次
1.犬や猫にとってのマダニ被害とは
2.マダニはいつ・どこでつく?意外と身近な感染ルート
3.マダニを見つけたら?やってはいけないこと
4.予防の基本
5.まとめ
犬や猫にとってのマダニ被害とは
マダニは皮膚に吸着して血を吸うことで、かゆみや炎症を引き起こすだけでなく、ウイルスや細菌を媒介する危険があります。
特にSFTSは人にも感染する人獣共通感染症であり、犬や猫から飼い主さまに広がるおそれがある点に注意が必要です。実際に、マダニに刺されて感染した人が亡くなった事例のほか、SFTSに感染した猫に噛まれて人が死亡したケースも報告されています。
愛犬や愛猫のマダニ予防は、動物を守るだけでなく、飼い主さまご自身やご家族を守ることにつながるのです。
マダニはいつ・どこでつく?意外と身近な感染ルート
「マダニは山や林にいるもの」というイメージを持つ方も少なくありません。ですが、実際にはもっと身近な場所で付着することがあります。
<マダニが潜む身近な場所>
・散歩中の草むらや公園の植え込み
・自宅の庭先や玄関まわり
・他の動物と接触した際の毛や衣服
このように、日常のちょっとした外出や接触でも、マダニに刺されるリスクがあります。完全室内飼いだからといって、感染リスクはゼロではないのです。
<飼育スタイルの変化と感染リスク>
昔は犬を玄関先につないで飼うことも多くありましたが、今は多くのご家庭で犬や猫は「家族の一員」として同じ室内で過ごしています。距離が近くなったことで絆は深まりましたが、その一方で犬や猫に付いたマダニが人に感染症をうつすリスクも高まっているのです。
身近な場所で簡単に付着すること、そして人と動物の距離が近くなった現代だからこそ、マダニ予防は「動物のため」だけではなく「飼い主さま自身やご家族を守るため」に欠かせない対策だといえます。
マダニを見つけたら?やってはいけないこと
犬や猫にマダニがついているのを見つけると、思わず指でつまんで取りたくなるかもしれません。ですが、自己処置はかえって危険を高めることがあります。
<自己処置で起こりやすいリスク>
・無理に引き抜くと、マダニの口の部分だけ皮膚に残ることがある
・マダニの腹部をつまんでしまうと、体液が体内に入り込み感染リスクが上昇する
このように、見た目には取れたように見えても、実際には大きなリスクが潜んでいるのです。
<正しい対応は「獣医師に相談」>
応急処置を試すより、まずは動物病院で適切な処置を受けることが大切です。
もしご家庭で取り除いてしまった場合も、口部の残存や炎症・感染が起きているおそれがあるため受診をおすすめします。
予防の基本
マダニ対策で最も大切なのは「予防を続けること」です。刺されてから対応するのではなく、一年を通じてリスクを避ける習慣が愛犬・愛猫、そして飼い主さまの命を守ることにつながります。
<マダニは通年で活動する>
一般的にマダニの活動期は3〜11月とされています。
ただし、気温が15℃を超えると冬でも活動することがあり、温暖化の影響でリスクは通年に広がっています。マダニ予防は「夏だけでいい」と思われがちですが、通年での予防がご家族全員を守る第一歩です。
<「フィラリア予防と一緒にやめる」は危険>
フィラリア予防を夏季に終わらせるタイミングで、マダニ予防もやめてしまう飼い主さまが少なくありません。しかし実際には、フィラリアのシーズンオフでもマダニは活動しているため、両者を切り離して考えることが重要です。
<選べる予防薬の種類>
・錠剤やチュアブルタイプ(おやつのように与えられる)
・皮膚に垂らすスポットタイプ
・ノミ・フィラリア・消化管内寄生虫も同時に予防できる複合タイプ
愛犬・愛猫の性格や生活環境に合わせて、無理なく続けられる方法を獣医師と一緒に選ぶことが安心につながります。
まとめ
SFTSはマダニが媒介する感染症であり、実際に人や犬・猫が亡くなっている身近な病気です。「うちは室内飼いだから大丈夫」と思わず、ご自身と大切な家族の命を守るために、正しい知識を持ち、通年でのマダニ予防を徹底することが大切です。
マダニ対策は愛犬・愛猫の健康を守るだけでなく、皆さんご自身の安全にもつながります。飼い主さまと動物が安心して暮らせるよう、予防を生活の一部として取り入れていきましょう。
◼マダニによるトラブルについてはこちらの記事もご覧ください
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