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犬のしこりや腫瘍はがん?種類と早期発見のポイントを獣医師が解説

愛犬をなでているときに、ふと「こんなしこりあったかな?」と感じたことはありませんか?

かつては平均寿命が10歳前後だった犬たちも、今では15歳を超えて元気に過ごすことが珍しくありません。長く一緒に過ごせるようになった分、腫瘍などの病気に出会う機会が増えているのも事実です。ですが「しこり=がん」とは限りません。しこりは良性のものも多く、正しい知識と早期発見・早期受診でより良い経過を目指すこともできます。

今回は、犬のしこりや腫瘍の種類、見つけ方、そして受診のポイントについて獣医師が解説します。


■目次
1.犬のしこり=すべてがんとは限らない
2.犬に多い腫瘍の種類と特徴
3.犬のしこりを見つけるには?早期発見のチェックポイント
4.動物病院での診断と治療の流れ
5.まとめ

犬のしこり=すべてがんとは限らない


愛犬の体にしこりを見つけると「まさかがんでは…」と不安になる飼い主さまも多いかと思います。ですが、しこりのすべてが命に関わるものとは限りません

犬の腫瘍には、大きく分けて「良性腫瘍」と「悪性腫瘍」の2つのタイプがあります。

<良性腫瘍>

良性腫瘍は、増えても周囲の組織に広がりにくいのが特徴です。
ゆっくりと大きくなることが多く、命に関わらないケースも少なくありません。
ただし、できる場所によっては歩きにくくなったり、関節の動きを妨げたりすることもあるため、適切なタイミングで対応することが大切です。

<悪性腫瘍>

一方で、悪性腫瘍はいわゆる「がん」と呼ばれるタイプです。
周囲の組織に入り込んだり、血液やリンパの流れに乗って転移したりすることがあります。
進行の速さや広がり方は腫瘍の種類によって異なり、早期に見つけることで治療の選択肢を広げられることもあります。

しかし、見た目や触った感触だけで良性か悪性かを見分けることはできません。柔らかいしこりが悪性のこともあれば、硬いけれど良性ということもあります。だからこそ「少し気になるな」と思ったときに検査で確認しておくと安心です。正確に状態を知ることが最善のケアにつながります。

犬に多い腫瘍の種類と特徴


犬の腫瘍は、できる場所によって特徴や気づかれ方が異なります。ここでは、よく見られる3つのタイプをご紹介します。

<皮膚にできる腫瘍>

犬の腫瘍の中でも最も多いタイプで、良性から悪性までさまざまなものが見られます。首や背中、脇など体のいろいろな場所にできることがあります。

▼主な腫瘍
脂肪腫:皮下の脂肪がかたまってできる、やわらかいしこり。多くは良性だが、似た悪性腫瘍(脂肪肉腫)もある。
肥満細胞腫:皮膚の免疫細胞が増えるタイプ。悪性に分類されるが、悪性度には幅があり、経過がゆるやかな場合もある。

▼気づかれるきっかけ
・撫でているときに「コリッ」とした感触に気づく
・毛づくろいやブラッシングのときにしこりを見つける

日常のスキンシップが、早期発見の第一歩になります。

<乳腺にできる腫瘍>

主に未避妊の雌犬(メスの犬)に見られるタイプです。乳首のまわりにコロコロとしたしこりとして現れることが多く、良性と悪性の割合はおよそ半々といわれています。

▼主な腫瘍
乳腺腫瘍:乳腺に発生する腫瘍で、複数見つかることも。

▼気づかれるきっかけ
・しこりの数や大きさが変化する
・乳首のまわりにしこりが増えた

触れたときの“変化”を覚えておくことが大切です。

<内臓や血液の腫瘍>

脾臓・肝臓・リンパ節など、体の中にできるタイプです。外から見えにくく、進行するまで気づきにくいこともあります。多くは悪性の傾向がありますが、良性のケースもあるため、画像検査などで正確に確認することが大切です。

▼主な腫瘍
脾臓腫瘍:おなかの中にでき、破裂すると急変することもあるタイプ。
リンパ腫:全身のリンパ節が腫れることが多い腫瘍。

▼気づかれるきっかけ
・おなかの張りが目立つ
・食欲の低下や元気のなさが続く
・なんとなく「いつもと違う」様子がある

外から見えない場所の異変は、一般的な診察では分かりにくいこともあります。早期に見つけるためには、定期的な健康診断を取り入れていただくことが有効です。

▼犬の健康診断についてはこちらで詳しく解説しています

腫瘍の種類や進行の仕方はそれぞれ異なります。まずは「どんな腫瘍なのか」を正確に知ることが、その子に合った治療を見つける第一歩です。

犬のしこりを見つけるには?早期発見のチェックポイント


しこりを早く見つけるいちばんの方法は、毎日のスキンシップです。撫でる、抱っこする、ブラッシングする――そんな何気ない時間の中で「いつもと違うかな?」という小さな変化に気づけることがあります。

<日常でできるチェックポイント>

以下のような点に注意してみてください。

▼しこりの有無や状態
以前はなかったしこりができていないか
大きさ・形・硬さに変化がないか
赤みやかゆみ、出血がないか

▼全身の変化
最近、体重が減っていないか
食欲や元気が落ちていないか
触られるのを嫌がる部分がないか

こうした変化の積み重ねが、早期発見の大切なサインになります。

「少し気になるな」と思った段階で受診しても、決して早すぎるということはありません。病院で検査を受けて“問題なし”とわかれば、愛犬の安心につながります。

<見た目では分からない異変に備えるには>

体の中にできるしこりは、日常のチェックだけでは気づきにくいことがあります。
見た目では分からない異変を早めに発見するためにも、年に1回の健康診断を取り入れていただくと安心です。特にシニア期(7歳頃〜)の犬では、半年に1回ほどのチェックをおすすめします。

ご家庭でのチェックと、動物病院での定期健診を組み合わせることで、より早い段階で異変を見つけられる可能性が高まります。愛犬の健康を見守る習慣として、ぜひご活用ください。

動物病院での診断と治療の流れ


しこりを見つけると「病院に行くとすぐ手術になるのでは」と不安に思う方もいるかもしれません。でも実際は、まず原因を丁寧に調べるところから始まります。

<診断の流れ>

動物病院では、しこりの性質や広がりを見極めるために、段階を踏んで検査を行います。

問診・視診・触診
しこりの位置・大きさ・硬さなどを確認し、発見時期や変化の様子をうかがいます。

細胞診(さいぼうしん)
針を使って少量の細胞を採取し、顕微鏡で腫瘍のタイプを確認します。
痛みはほとんどなく、体への負担も少ない検査です。

画像検査(レントゲン・超音波・CTなど)
体の中の状態を調べ、腫瘍の大きさや転移の有無を確認します。

これらの検査を組み合わせることで「どんな腫瘍か」「どこまで広がっているか」を正確に把握します。

<治療の選択>

検査結果をもとに、腫瘍の種類や進行度、その子の体力や年齢を踏まえて、最も負担の少ない方法を一緒に考えていきます

主な治療法としては次のようなものがあります。

外科手術:しこりを切除する治療。根治を目指す場合に選択されます。
薬による治療:抗がん剤や免疫療法などで進行を抑える方法です。
経過観察:良性や体への負担が大きい場合は、定期的に状態を確認しながら見守ります。

検査や治療には不安がつきものかと思いますが「何のために行うのか」「どんな選択肢があるのか」を理解することで、安心して向き合うことができます。気になるしこりを見つけたときは、まずはご相談ください。

まとめ


犬のしこりや腫瘍は「がんかもしれない」と不安になる一方で、「様子を見よう」とつい後回しにしてしまうことも少なくないかと思います。ですが、しこりは小さいうちに調べるほど、体への負担を少なく治療を進めやすくなることも多いため、気づいた時点で一度確認しておくことが、愛犬を守るいちばんの近道です。

毎日のスキンシップは、そうした小さな変化に気づくための大切な時間です。撫でたり抱っこしたりする中で「いつもと違うかな」と感じたら、ぜひ早めにご相談ください。当院では、愛犬の状態を丁寧に確認しながら、その子に合った最善の方法を検討していきます。

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