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夏の犬の皮膚トラブル対策|虫刺されや熱性皮膚炎から守るために

高温多湿な日本の夏は、犬の皮膚にとって非常に過酷な季節です。この時期は「最近よく掻いている」「赤みや湿疹ができた」といった相談が数多く寄せられます。気温や湿度の上昇、散歩やアウトドアの機会が増えることにより、皮膚への負担や外的刺激が増すことが大きな要因です。

今回は、夏に多い犬の皮膚トラブルとその対策について、獣医師の視点から解説します。早期発見と適切なケアによって、愛犬の皮膚を健康に保ちましょう。


■目次
1.夏に多い犬の皮膚トラブルとは?
2.虫刺されのリスクと対策
3.熱性皮膚炎の予防とケア
4.受診の目安と応急処置
5.自宅でできる皮膚ケアの習慣
6.まとめ|夏の皮膚トラブルを予防して快適な季節に

夏に多い犬の皮膚トラブルとは?


夏に多く見られる皮膚トラブルには、次のようなものがあります。

虫刺され(蚊、ノミ、ダニなど)
熱性皮膚炎(高温多湿による細菌・真菌の増殖)
ホットスポット(急性湿性皮膚炎)
アトピー性皮膚炎やアレルギーの悪化

虫刺されでは、赤み・腫れ・かゆみ・発疹といった反応が見られます。熱性皮膚炎やホットスポットでは、ジュクジュクした湿疹や脱毛、強いかゆみが急速に広がることがあります。

見た目の異常だけでなく、以下のような行動の変化にも注意しましょう。

体を頻繁に舐めたり掻いたりする
落ち着きがなくなる
散歩や触られるのを嫌がる

これらのサインに早く気づくことが、重症化を防ぐための第一歩です。

虫刺されのリスクと対策


夏は蚊やノミ、ダニなどの活動が活発になる季節です。虫刺されによってかゆみや皮膚炎を引き起こすだけでなく、フィラリア症やダニ媒介感染症といった深刻な病気を引き起こすリスクもあります。

また、刺された部分を舐めたり掻いたりすることで細菌感染が起こり、さらに悪化してしまうケースも少なくありません。

ノミやダニが媒介する感染症の中には、人にも感染する「動物由来感染症(ズーノーシス)」が含まれるため、ご家族全体の健康を守るうえでも予防は非常に重要です。

▼動物由来感染症(ズーノーシス)についてはこちらで詳しく解説しています

<虫刺され対策のポイント>

ノミ・ダニ予防薬の定期投与(通年が基本ですが、夏は特に重要)
散歩は早朝・夕方の涼しい時間に、虫の少ないコースを選ぶ
室内・庭の清掃を徹底し、虫の発生源を減らす
虫除けグッズの活用(犬用網戸やスプレーなど)

これらの対策を日常的に行うことで、虫刺されによる皮膚炎や感染症のリスクを大幅に減らすことができます。

熱性皮膚炎の予防とケア


熱性皮膚炎とは、湿気や熱で皮膚のバリア機能が低下し、常在菌や真菌(カビ)が異常に増殖することで起こる皮膚炎です。特に以下の部位に注意が必要です。

お腹
足の付け根
首まわり
耳の裏
脇や内股

厚い被毛に覆われた犬種短頭種は熱がこもりやすく、発症リスクが高まります。

<予防のポイント>

こまめなブラッシングで通気性を良くする
シャンプー後はしっかり乾かす(自然乾燥はNG)
温度・湿度管理を徹底する(室温25〜28℃、湿度50%以下が目安)
部分洗いで汚れを早めに落とし、皮膚を清潔に保つ

皮膚トラブルの多くは、日頃のケアで予防することができます。蒸れやすい部位は特に丁寧にケアしましょう。

受診の目安と応急処置


以下のような症状が見られた場合は、早めに動物病院を受診しましょう。

広範囲の赤み・出血・膿が見られる
数時間で広がる湿疹や急なかゆみ
発熱・食欲不振・元気の低下など全身症状がある

<応急処置としてできること>

患部を清潔に保つ(ぬるま湯で優しく洗い、しっかり乾かす)
掻いたり舐めたりできないよう保護(エリザベスカラーの使用など)

ただし、市販薬や人間用の薬を自己判断で使用するのは厳禁です。症状を悪化させたり、副作用を引き起こすリスクがあります。

自宅でできる皮膚ケアの習慣


皮膚トラブルの多い夏こそ、毎日のちょっとしたケアが愛犬の皮膚を守る大きな力になります。以下のようなポイントを意識しながら、ケアの習慣を取り入れてみてください。

シャンプーは適切な頻度で
洗いすぎは皮膚のバリアを壊す原因にもなります。愛犬の肌質や体質に合った頻度を、かかりつけの獣医師と相談しながら決めましょう。

定期的なブラッシングで通気性を保つ
ポイントは「毛の流れに沿って、やさしく、ムラなく」行うこと。力を入れすぎず、愛犬がリラックスできるような時間にするのが理想です。

寝床や室内の環境を清潔&快適に
特に湿度の高い夏場は、カビや雑菌が繁殖しやすくなります。エアコンや除湿機を使い、風通しのよい環境づくりを意識しましょう。

散歩後は、足先やお腹を軽く洗ってしっかり乾かす
地面からの汚れや湿気をそのままにしないことが、皮膚トラブルの予防につながります。

毎日のスキンシップで小さな変化を見逃さない
なでたりブラッシングしたりするなかで「あれ、赤くなってるかも?」「毛が少し抜けてる?」と気づけることもあります。

何より大切なのは「気づいてあげられること」。いつもの様子を知っている飼い主さまだからこそできるケアを、夏の間は特に意識してあげてくださいね。

まとめ|夏の皮膚トラブルを予防して快適な季節に


夏は犬の皮膚トラブルが急増する時期ですが、適切な予防と日々のチェックによってその多くを防ぐことができます。また、虫刺されや熱性皮膚炎、ホットスポットは進行が早く重症化しやすいため「早期発見・早期受診」が何より大切です。

日常のケアと観察に加え、気になる症状があれば早めに動物病院に相談することで、愛犬の健やかな毎日を守ることができます。暑い季節も、皮膚トラブルに負けず元気に過ごせるよう、日々のケアと予防を心がけましょう。

◼犬の皮膚トラブルについてはこちらの記事もご覧ください

 

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